今回は真言宗の宗祖、弘法大師様についてお話したいと思います。
高野山を開創なされた大師は、その後も都と高野山を行き来しておりました。多くの著作で真言密教の教えを明らかにするかたわら、山で静かに瞑想にふけることを好みました。
東寺の自作したお不動様に別れを告げた大師は高野山に向かい、少しずつ整備されていく高野山の山容に喜びを感じつつも、入定(にゅうじょう)に向けて準備を始めていきます。入定とは、その身そのままで永遠の瞑想に入り、わたしたちのことを思い、祈り続けることを言います。
高野山万灯会(まんどうえ)の願文(がんもん)、「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願ひも尽きん」は有名です。この言葉は、「私たちの住むこの世界がなくなり、救うべき、生きとし生ける者がいなくなり、求めるべき悟りの世界がなくなるまで、私の願いは尽きることはありません」という意味です。つまりそれは永遠の誓いであり、大師はそのお心(こころ)のままに、今も高野山の奥の院に生き続けておられます。
真言宗を信仰するわたしたちは、お寺のご本尊を心のよりどころとし、自分と大切な人の命を守り、思いやりの心を持つ生活を心がけましょう。
そして、お大師さまの「同行二人」というお言葉。それは「お大師さまは、いつもわたしたちのすぐそばにいらっしゃる」という意味です。
いま世界情勢は緊迫し、コロナ禍により孤独や喪失感を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんな時こそ仏さまにそっと手を合わせることで、その悲しみや苦しみが少しずつ、やわらいでいくことでしょう。
一日も早く、平和な日々が戻ることを心より祈念しております。